抗不整脈薬

抗不整脈薬

病態

心不全と不整脈は密接に関連しており、不整脈が心不全の原因となったり、心不全が悪化すると不整脈を誘発したりする。

不整脈は心不全のひとつの原因といえる。

不整脈とは、脈がゆっくり打つ、速く打つ、または不規則に打つ状態。

脈拍の正常値は成人、安静時で約60~100回。

脈が1分間に60未満の場合は徐脈、100以上の場合は頻脈。

不整脈の種類には上室期外収縮、心室期外収縮、上質頻脈、WPW syndrome,心房細動、心房粗動、心室頻脈などがある。

近年、不整脈を抗不整脈薬で抑制するよりも基礎疾患や合併症の有無が重要となっている。

非薬物療法(植え込み式除細動器、カテーテルアプレーション:不整脈の原因となる心臓内の異常な部位をカテーテルで焼灼して正常なリズムを取り戻す治療法)の補助として用いられる役割も大きい。

βブロッカーは長期投与で長期予後を目的として用いられるが、その他の抗不整脈薬は自覚症状の軽減や非薬物療法の軽減を目的とする事が多くなっている。

治療薬

経口薬の場合、副作用は4日以内に発現する可能性が高い。

副作用としては催不整脈作用(不整脈を抑制する作用以外に本来なかった不整脈)の誘発に注意する必要がある。

Ⅰa群に関しては、抗Ach作用による口渇、排尿障害、眼圧上昇キニジンの下痢症状に注意する必要がある。

アミオダロン:アンカロンは作用時間が極端に長い事に注意する。

分類

従来の分類では抗不整脈薬はその薬剤の種類によってⅠ~Ⅳ型までに分類されている。

抗不整脈薬の分類にはVaughan Williams分類、Sicilian Gambit分類がある。

Vaughan Williams分類は、活動電位への作用に基づくものでありSicilian Gambit分類はイオンチャネル、受容体、分子標的などの作用に基づいた分類。

Vaughan Williams分類

Ⅰ, Naチャネル遮断薬
Naチャネル抑制効果により活動電位持続時間を変化させる。

a~cに分類される

a 活動電位持続時間を延長させる 。

上室性不整脈、心室性不整脈に有効、
陰性変力作用を持つ
催不整脈作用がある

b 活動電位持続時間を短縮させる。

心室性不整脈作用を持つ
陰性変力作用は弱い

c 活動電位時間を不変にする。

上室性不整脈、心室性不整脈に有効、
抗不整脈作用は強い
陰性変力作用が強い
催不整脈作用がある

Ⅱ , 交感神経遮断薬(β-blocker)
交感神経β受容体を遮断する
カテコラミン遮断作用
頻脈性不整脈に有効

Ⅲ Kチャネルを遮断
他剤無効の重症の不整脈に適応される
催不整脈作用がある

Ⅳ Ca拮抗薬
房室伝導を抑制する
心筋収縮抑制作用がある

Sicilian Gambit分類
近年ではVaughan Williams分類に代わるものとしてSicilian Gambit(1991)の分類も提唱されている
Na、Ca、K、Ifイオンチャネルへの作用、受容体α、β、M2、A1への作用、Na-K、ATPAseポンプへの作用から分類される。

ATP、アテノシン、アトロピンなども含まれる。

注意点

三環系抗うつ薬、マクロライド系薬剤、H2ブロッカーは、不整脈の原因(QT延長による)になる可能性がある。

抗不整脈薬は自己判断による中止で症状が悪化する。

抗不整脈薬は多くがハイリスク薬。用法、用量を守る。

抗不整脈薬は新たな不整脈を引き起こす可能性がある事がある。

その傾向は高齢者で強く低用量からの開始が望ましい。

薬剤

https://knowledge.nurse-senka.jp/226988

A、Naチャネル遮断薬(クラスⅠa~Ⅰc) Naチャネル遮断薬

B、クラスⅡ群(βブロッカー)

C、クラスⅢ群  Kチャネル遮断薬

D、クラスⅣ群  カルシウム拮抗薬


A、Naチャネル遮断薬

脈に関与する電気信号の一つであるNa(ナトリウム)イオンの通り道を塞ぎ、乱れた脈(主に頻脈)を整える。

Naイオンの心筋内への流入を抑制し、その後の活動電位発生までの流れを抑制する。


クラスⅠa群

プロカインアミド塩酸塩 :アミサリン

ジソピラミド :リスモダン

ジソピラミドリン酸塩徐放剤 :リスモダンR

ジソピラミドリン酸塩:リスモダンP

キニジン硫酸塩水和物 :キニジン硫酸塩「VTRS」

シベンゾリンコハク酸塩 :シベノール

ピルメノール塩酸塩水和物:ピメノール

クラスⅠb群

リドカイン塩酸塩:キシロカイン、リドカイン「テルモ」、リドカイン「タカタ」

メキシレチン塩酸塩:メキシチール、メキシレチン硫酸塩

アプリジン塩酸塩錠:アスペノン

クラスⅠc群

プロパフェノン塩酸塩:プロノン

フレカイニド酢酸塩:タンボコール

ピルシカイニド塩酸塩水和物:サンリズム

B、クラスⅡ群、βブロッカー

心筋上のβ-recepterをblockする事によって自律神経系を介した心筋収縮作用を抑制する。頻脈性不整脈に有効。

ランジオロール塩酸塩 :オノアクト コアベータ

エスモロール塩酸塩:ブレビブロック

C、クラスⅢ群

Kチャネルイオンの心筋内への流入を抑制する事によって、不応期と呼ばれる時期を延長する。他剤無効の重症の不整脈に適応される。

アミオダロン塩酸塩 :アンカロン

ソタロール塩酸塩:ソタコール

ニフェカラント塩酸塩:シンビット

D、Ca拮抗薬(クラスⅣ群)

心筋細胞内へのCa(カルシウム)イオンの流入を阻害し、心筋の異常な収縮を抑えることで乱れた脈(主に頻脈)を整える。

ベラパミル塩酸塩:ワソラン

ベプリジル塩酸塩水和物:ベプリコール