心不全治療薬・昇圧薬

心不全治療薬・昇圧薬

心臓の構造と血液の流れ

https://heart-failure.jp/about/heart-action/

心臓を養う3本の血管:冠動脈

心臓の筋肉が、一刻も休むことなく動き続けるにはエネルギー源(酸素と栄養素)が必要。

そのエネルギー源を心筋へ運ぶために、心臓の表面には3本の冠動脈という太い血管が走っている。

https://heart-failure.jp/about/heart-action/

心不全とは

急性と慢性がある。

心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気

不全はひとつの病気ではなく、心臓のさまざまな病気(心筋梗塞、弁膜症、心筋症など)や高血圧などにより負担がかかった状態が最終的に至る"症候群"

https://www.jhf.or.jp/check/heart_failure/02/

1、虚血性心疾患

心筋梗塞狭心症など。

心筋を取り巻いている冠動脈は心臓に血液と酸素を送っている。

これが動脈硬化で硬くなりコレステロールなどが沈着すると血液の通り道が塞がれ、心筋に血液を送ることができなくなる。 そのため心筋は酸素不足となる。

2、弁膜症

心臓の弁に障害が起きて血液がスムーズに送れなくなる病気、

心臓は血液を全身に送るポンプの役割を果たしている臓器。その流れを保つために弁がある。

これらの弁が正常に作動することで血液は適切に循環する。

弁膜症と呼ばれる弁の機能障害が起きると、心不全などのような問題が生じる可能性が高まる。

弁膜症は「狭窄」「閉鎖不全」の2タイプにわかれる。

狭窄とは、弁が十分に開かず血流が制限される状態であり、閉鎖不全は弁が完全に閉じないため血液が逆流する状態。

3、心筋症

心臓の筋肉自体に異常があり、その結果、心臓の働きを維持できなくなる病気など

心臓の収縮性が進行性に低下し、心臓が特徴的な拡張を呈する「拡張型心筋症」

心筋の肥大が特徴的な「肥大型心筋症」

心臓の拡張が高度に障害される「拘束型心筋症」

4、高血圧

高血圧症の人の血管は、高い血圧に耐えるために壁が厚く硬くなる。

このため心臓は、血液をより強い力で押し出そうとする。こういう状態が続くと、心筋は厚くなり、伸び縮みしづらくなる。こうして、全身から心臓に戻る血液も、心臓から全身へ送り出す血液も少なくなってしまい、心不全を発症する。

5、不整脈

不整脈(規則的でない脈)は心不全を呼ぶ危険因子。特に、頻脈発作を起こすような不整脈では、心筋が常に活発に働かざるをえなくなる。その結果、やがて心筋が疲労して、心不全を発症する。

https://www.jhf.or.jp/check/heart_failure/02/

うっ血性心不全は、心不全という大きなくくりの中のひとつの病態。

https://newheart.jp/glossary/detail/cardiovascular_medicine_011.php

心筋収縮能低下また、心筋拡張機能が何らかの原因で生じ、心筋拍出量の低下、臓器血流低下、血圧低下が認められるとそれに反応して神経体液因子の活性が生じる。

レニン―アンギオテンシン系Renin-Angiotensin System:RAS(血圧の上昇を引き起こす)の賦活化。

アルドステロン(腎においてNa+と共に水分をを体液側へと流入させる:血圧の上昇に結びつく)の賦活化。

交感神経の賦活化がおこる。

水分、Naの増加、うっ血は心臓に流入する血液の絶対量を増加させるため、心臓に入ってくる血液の処理を行う心臓の負荷は大きくなる。

この症状を心不全における前負荷の増加と呼ぶ。

交感神経系の賦活化やRASの賦活化による血圧上昇は、末梢においても生じ心臓が送り出す血流に対して負荷がかかってくる。

この症状を 後負荷といい 前述の前負荷と併せて心不全の病態の中核であると言える。

薬物治療の概要

大きく分けて「心不全の悪化を遅らせる薬」と「心不全の症状を緩和する薬」がある。

「心不全の悪化を遅らせる薬」

・心臓を保護するお薬

ACE阻害薬、ARB、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬

心不全ではレニン・アンジオテンシン・アルドステロンといったホルモンが過剰に分泌されているため、そのバランスを調節し、心臓を保護する。

・心臓を休ませるお薬

β遮断薬

心不全では、心臓が十分に血液を送り出すことができないため、それを補うために心拍数が高くなっています。その状態をリラックスさせて、無理をしすぎている心臓を休ませます。

・合併症のリスクを減らすお薬

SGLT2阻害薬

心臓の血管を保護することなどで、心不全の悪化を防ぐ。

「心不全の症状を緩和するお薬」

利尿薬

体に溜まった水分を外に出すことで、心臓にかかる負担を減らす。むくみをとる。

強心薬

心臓が収縮する力を強めて、全身に血液を送り出すポンプ機能を助ける。

強心薬

ジギタリス製剤

強心作用(収縮力増大作用)、心拍数減少作用(頻脈抑制)、興奮伝導遅延作用があるが、

うっ血性心不全では、強心力を高めることが必要。ジギタリス製剤は、心臓に作用し心拍出力を高める。

その機序はNa-Ca交換機構を通し、細胞内Caを増加させる(陽性変力作用)ことによる。

心房細動・粗動による頻脈では、心拍数減少作用(頻脈抑制)で効果を発現。

薬が治療に役立つ薬物濃度の有効域が狭く、血中濃度の推移など副作用防止に対する留意が必要である。

カテコラミン製剤

急性心不全や慢性心不全に不可欠であるが、特にその適応は急性循環不全(心原性ショック、出血性ショック)などが主であり、投与も注射薬のみである。

本当に心臓が止まりそうな状態の急性期の使用が主体。

NA前駆物質のドパミン(商品名:イノバン)またはドブタミン(商品名:ドブトレックス)は陽性変時作用、不整脈の誘発作用は少なく 急性循環不全の第一選択薬となり得る。

t1/2は極めて短い。

効果発現までの時間も短く静脈注射薬のみという事もあるが1~2分以内(効果発現までの時間が極めて短い)である。

低用量でDA受容体刺激作用発現、腎、冠動脈血流が増加、利尿作用が起こる。

中用量の場合心筋収縮力増加、心伯数増加が起こり α受容体刺激作用(自律神経薬の項参照)が現れる。

ドブタミンは強い強心作用、軽度な末梢血管拡張、陽性変時作用はない。

DA製剤と異なりDA受容体刺激作用よりもβ1刺激作用が主力となる 。

DA製剤と異なる点:末梢血管収縮作用が弱く昇圧作用は経度、心伯数増加作用が弱い、

腎血管拡張作用はない従って利尿作用は期待できない、肺動脈拡張作用を持つなど

血圧の維持が優先される場合 ドパミン>ドブタミン

虚血性心疾患 ドパミン<ドブタミンを優先的に使用する事が望ましい

PDEⅢ阻害薬

PDE-3 (ホスホジエステラーゼ3)は、cAMP(サイクリックAMP)の分解を触媒する酵素の一種。

心臓や血管の筋肉に多く存在。

PDE-3阻害薬は、cAMPの分解を阻害することで、心臓の収縮力を高め、血管を拡張させる作用をもつ。

心房性Na利尿ペプチド製剤

利尿作用と血管拡張作用をもつ。

ARNI(アンギオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬

ARBとしての作用と、ネプリライシン(抗利尿酵素)阻害による利尿作用による心不全の予後改善。

HCNチャネル阻害薬

心拍数を低下させ、心保護作用を発揮し、心不全予後を改善。

可逆性グアニル酸シクラーゼ刺激薬

グアニル酸シクラーゼを活性化させ、cGMPを上昇させる。心筋収縮力は増大する。

その他(心不全治療薬)

AngiotensinⅡの受容体のblockerであるAT-Ⅱblocker、β-blocker、抗アルドステロン薬を用いる。

それによって過度な神経体液の活性は防がれる。

その理由でこれらの薬剤も併せて用いられる。

薬剤

ジギタリス製剤

ジゴキシン:ハーフジゴキシンKY、ジゴシンKY、ジゴシン「KYO」ジゴシン

メチルジゴキシン:ラニラピッド

デスラノシド:ジギラノゲン

カテコラミン

ドパミン塩酸塩:イノバン、ドパミン塩酸塩

ドブタミン塩酸塩:ドブトレックス、ドブタミン

ドカルパミン:タナドーパ

イソプレナリン塩酸塩:プロタノール

アドレナリン:エピペン、アドレナリン「テルモ」

ノルアドレナリン:ノルアドレナリン

デノパミン:カルグート

コルホシングロパート塩酸塩:アデール

ブクラデシンナトリウム:アクトシン

フェニレフリン塩酸塩:ネオシネジン

エチレフリン塩酸塩:エホチール

ミドドリン塩酸塩:メトリジン

アメジウムメチル硫酸塩:リズミック 

PDE-3阻害薬

オルプリノン塩酸塩水和物:コアテック

ミルリノン:ミルリーラ、ミルリノン

ピモベンダン:ピモベンダン「TE」

心房性Naペプチド製剤

カルペリチド:ハンプ

ARNI:アンギオテンシン受容体ネブリライシン阻害薬

サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物:エンレスト

HCNチャネル阻害薬

イバブラジン塩酸塩:コララン

可逆性グアニル酸シクラーゼ刺激薬 グアニル酸シクラーゼは、GTPを環状GMP(cGMP)に変換する酵素。

ベルイングアト:ベリキューボ

トランスレチノイン型アミロイドーシス治療薬

タファミジスメグルミン:ビンダケル

タファミジス:ビンマック

その他

ユビデカキノン:ノイキノン、ユビデカキノン