腎疾患用剤
病態
慢性腎臓病CKD(chronic kidney disease)は
1、構造的あるいは機能異常が3か月以上持続する腎障害とされており、
①腎の病理学的な異常
②血液あるいは尿の検査値異常
③1、画像検査による腎の形態異常
2、糸球体濾過量が、60ml/min/1.73m2以下の状態が3か月以上持続(腎障害の有無は問わない)
の1か2が当てはまった場合、CKD(慢性腎臓病)とされている。
2、の指標となるのが推算糸球体濾過量(eGFR)。
eGFRは、どれくらい老廃物を尿へ排泄する能力があるかを示しており、この値が低いほど腎臓の働きが悪いということになる。
GFRは腎臓が血液をろ過する能力を直接測定したもので、eGFRは血液検査の結果などから推算した値。血清クレアチニン値と年齢と性別から計算される。 GFR値はイヌリンや放射性物質などの指標物質を用いる方法。ただし、病院で日常的にこの測定を行うのは負担が大きいため、推算値であるeGFRが広く利用される。
腎臓の働き
・血液中の老廃物などをこし出して尿をつくる
・赤血球の産生を促すホルモン「エリスロポエチン」の生成
・血圧をコントロールするホルモン「レニン」の生成
・ビタミンDの活性化
心臓からおくり出された血液は全身をめぐり、老廃物などを含んで腎臓に入ってくる。
腎臓にある糸球体は、その血液をろ過して尿の元(原尿)をつくり、きれいになった血液を心臓に戻す。
糸球体でつくられる原尿の量は糸球体ろ過量(glomerular filtration rate: GFR)といい、腎機能の指標として用いられる。
原尿が尿細管を通るとき、からだに必要な水や電解質などは再吸収され、不必要な老廃物などは尿として腎盂から尿管を通って体外に排泄される。
腎動脈:腎臓に血液を送る血管。腹部大動脈から枝分かれし、左右の腎臓にそれぞれ血液を供給。
糸球体:細い毛細血管が毛糸の玉のように丸くなっている。血液をろ過して尿の元(原尿)を作る 。
ボーマンのう:糸球体を包んでいる袋状のもの。
腎小体:糸球体とボーマンのう。
尿細管:からだに必要な水や電解質(ナトリウム、カリウム、カルシウムなど)を原尿から再吸収し、不要なものは腎盂におくる。
尿細管は近位尿細管、ヘンレ係蹄、遠位尿細管、という部位に分けられており それぞれの場所で再吸収される成分は異なっている。
ネフロン:腎小体(糸球体+ボーマンのう)と尿細管のセット。
腎盂(じんう):腎臓で作られた尿が最初に集まる場所。腎盂は、尿管という管につながっており、尿は腎盂から尿管を通って膀胱に運ばれる。
尿管:腎臓と膀胱をつないでいる管
https://p.ononavi1717.jp/ckd/01_functions.html
濾過作用の詳細
腎臓内に入り、枝分かれした動脈(動脈は流れ込む側、静脈は流れ出す側)は細動脈となり糸球体を形成する。
この糸球体を構成する血管壁から血液中のたんぱく質以外の血漿成分は水分とともに、糸球体嚢へと出ていく。
この働きを通して腎臓に流れ込んできた血液は血中の蛋白を除いて濾過され 、水分、血漿成分が原尿として尿管側に出ていく。
通過したものは尿細管を経由し尿管側に流れるが、この途中で最初の「濾過」の段階でフィルターを透過してしまった 有用な成分である塩類、糖類、水分などが再び再吸収され血液側に移行する。
尿細管は近位尿細管、ヘンレ係蹄、遠位尿細管、という部位に分けられており それぞれの場所で再吸収される成分は異なっている。
https://www.kango-roo.com/learning/2785/
近位尿細管:アミノ酸、ブドウ糖、水分、ナトリウム、塩素
遠位尿細管:水分、ナトリウムの吸収、カリウムの排出
遠位尿細管は集合尿細管に繋がっておりここでも水分、ナトリウム、の吸収とカリウムの排せつが行われるが脳下垂体からのホルモン:アルドステロンが関わる。
その分泌は脳下垂体からであり体液中のナトリウムの増加や水分の増加によって放出が促される。
またその逆の均衡状態になるとアルドステロンの分泌は抑えられる。
薬物治療
高血圧はCKD(慢性腎不全)の病状進行における最大の危険因子とされている 。
降圧を促すことはCKDの病状進展の防止、改善に対して効果がある。
降圧目的でCKDに使用される薬剤は、肝代謝型で腎臓への影響が少なく、安全に使用する事が出来るACE阻害薬かARB、ATⅡblockerが使用される。
これらの薬剤は尿蛋白、尿中微量アルブミン(尿中のアルブミンは腎臓の障害や機能低下を早期に発見できる指標)の減少、腎保護作用、などによりCKDの症状緩和に大きく寄与する
。
さらにこれらの薬剤と利尿薬の併用によってその降圧効果が上がることが明らかにされている。
また ジピリダモール(ペルサンチン)、ジピリダモール除放剤(ペルサンチン-L)塩酸ジラセブ(コメリアン)などの抗血小板薬を併用して用いる事がある。
・腎機能が低下すると高K血漿になりやすくなる。
濃度が高すぎると不整脈や筋力低下などの症状を引き起こす。
その際には、イオン交換樹脂である、
ポリスチレン スルホン酸ナトリウム(ケイキサレート)や
ポリスチレンスルホン酸カルシウム(カリメート)(アーガメイトゼリー)、
ジルコニウムシンクロケイ酸ナトリウム水和物(ロケルマ)を用いる。
イオン交換樹脂は過剰なK+とNa+、Ca2+を交換する事によって腎機能低下に基づく高K血漿を改善する。
食事と間隔があくと効果がなくなるので、食事のあとすぐに服用する。
イオン交換樹脂は食事の影響をうけたり、便秘になり易い。ロケルマは影響を与えない。
ロケルマは、懸濁性の粉状の製剤のみであり、水に溶けないため、よくかき混ぜて成分が沈殿する前に飲む。
約45mlの水に懸濁し、服用。
・腎機能の低下は尿毒症を引き起こす。
尿毒症:尿毒症とは 本来、腎臓で排出される、体の中で不要になった老廃物や毒素が、腎臓が障害を受けて十分に機能しなくなり体内に蓄積する症状。
腎機能低下に基づく尿毒症には吸着剤である炭素(クレメジン)を、代謝性アシドーシス(腎臓は重炭酸イオンの再吸収や尿酸排泄を担っているため)には炭酸水素Na(重そう)を用いる。
クレメジンは、食事、他の薬剤服用を時間を空ける事が服用が望ましい。
食後に服用すると、クレメジンが食物も吸着してしまう。他の薬剤も吸収する。
・腎機能が低下すると高リン血漿をおこす。
腎臓はリンを排泄する役割を担っており、腎機能が低下するとリンが体内に蓄積。
薬剤の成分名と商品名
腎機能検査用薬
イヌリン(イヌリード)、インジゴカルミン(インジゴカルミン)など。
腎疾患用剤の成分名と主な商品名
Ca受容体作動薬
シナカルセト塩酸塩:レグパラ
エチルカルセチド塩酸塩:パーサビブ
エボカルセット:オルケディア
ウパシカルセトナトリウム水和物:ウパシタ
MR拮抗薬
フィネレノン:ケレンディア
高リン血症治療薬
セベラマー塩酸塩:レナジェル、フォスブロック
沈降炭酸カルシウム:カルタン
炭酸ランタン水和物:ホスレノール、炭酸ランタン水和物
ビオサロマー:キックリン
クエン酸第二鉄水和物:リオナ
スクオロキシ水酸化鉄:ピートル
テナパノル塩酸塩:フォセベル
尿毒症治療薬
クレメジン、球形吸着炭
*食物を吸着するので食間に服用する。腎不全の末期の臨床症状として定義される。
他に飲んでいる薬があれば同時服用をさけて、他剤服用後、30分〜1時間以上あける事が望ましい。
高K治療薬
ポリスチレンスルホン酸ナトリウム:ケイキサレート
ポリスチレンスルホン酸カルシウム:カリメート、ポリスチレンスルホン酸Ca
食事と間隔があくと効果がなくなるので、食事のあとすぐに服用する。便通や腹痛、吐き気などに注意が必要。
ジルコニウムシンクロケイ酸ナトリウム水和物:ロケルマ
1袋を、45mLの水に入れてよくかき混ぜて服用。 水に溶けにくいので、薬が沈殿する前に飲む。
パチローマソルビテクスカルシウム:ピルタサ
代謝性アルドーシス治療薬:炭酸水素ナトリウム
瘦痒症治療薬
ナルフラフィン塩酸塩:レミッチ
ジフェリケファリン酢酸塩:コルスバ
腎機能検査用薬
イヌリン:イヌリード
インジゴカルミン:インジゴカルミン「AFP」
フェノールスルホンフタレイン:フェノールスルホンフタレイン「AFP」
パラアミノ馬尿酸ナトリウム:パラアミノ馬尿酸ソーダ
透析液
ろ過型・透析ろ過型人工腎臓用補充液:サブラッド
個人用透析型人工腎臓掃流液:バイフィル
透析型人工腎臓掃流駅:カーボスター
透析型人工腎臓掃流駅:キンダリー、AKーソリタ
腹膜透析液:ダイアニールPD-2、4,NPD-2、NPD-4、ミッドペリック、L、ペリセート、エクストラニール、ニコベリック、レギュニール