パーキンソン病治療薬
病態
脳内のドパミン神経細胞が減少することで、運動や自律神経、精神などの症状を引き起こす神経変性疾患。
中脳における黒質線条体のDAの欠乏を主原因とする 振戦、筋固縮、無動、姿勢反射障害の症状に代表される疾患である。
薬剤の副作用や、脳血管障害によってもパーキンソン病と類似した 上述した様な症状が見られる場合があるので、パーキンソン病との判別の診断の基準の一つとして以下に述べるパーキンソン病治療薬に対する反応性の差を見ることが挙げられる。
パーキンソン病である場合は対象薬剤に対する薬剤への反応性が比較的高くみられる Hoehn and Yahrの重症度分類によるとその症状の進行に合わせてStage1~5までに分類されており
現在のパーキンソン病の診断や薬物治療におけるstandardとなっている 。
Stage1においての症状は1側性で、機能的な障害はないかもしくは、あっても軽度なものであり
Stage2においては両側性の障害はあるが、姿勢反射障害はない 日常生活、就業は多少の差はあるが来なうことができる 。
Stage3においては 姿勢反射がみられ、活動はある程度制限されるが職種によっては仕事が可能であり機能障害は軽~中等度、自力での生活が可能。
Stage4においては重篤な機能障害を呈し、自力による生活は困難、歩行はどうにか可能である 。
Stage5においては起立、歩行不可能、介助なしにはベッド、車椅子での生活とされている 。
薬物治療においてはこのStage1,2の症状の改善を目的としDA製剤の特徴であるSide effectsの多さにも留意し治療を進める 。
DAはBBB:blood brain barrrierを直接通過する事ができないため、DA製剤の直接投与による治療効果は望めないため 、その前駆体であるL-DOPAが治療に際し有効かつ主力となる。
が長期使用における作用時間の短縮、症状の日内変動そして中枢へ与えるSide effectsの問題があるため例外(認知症の合併例や高齢者を対象とする場合)を除いてはDA
agonistを治療当初において使用する事が推奨されている。
薬物治療
Hoehn and Yahrの分類を十分念頭に置き使用薬剤の選択、投与を行う。
パーキンソン病治療薬の長期使用によって以下のように 薬剤に対する反応性に変化が現れる。
wearing-on:L-DOPAの服用から得られる症状改善効果が薬剤によってコントロールされている状態。
wearing-off:L-DOPAの症状改善効果がえられていない状態。
delayed-on:レボドパの服用後、薬が効いてきたと感じるまでに、今まで以上に長い時間がかかっている状態を表す。
delayed-off:
レボドパ含有製剤
L-DOPA含有製剤として商品名:ドパストン、ドパール、ドパゾールがあり、これらは 病態でも述べたようにDAのBBBを通過不良改善の目的で前駆体として経口投与し、BBB透過後に線条体にてDAに変換されるものである。
その他L-DOPA含有物質として,カルビドパの合剤やベンセラシドとの合剤がある。
前者の薬剤には商品名:ネオドパストンやメネシットがあり、後者にはECドパール、マドパーがある。
カルビドパ、ベンセラシドはL-DOPAからDAに変換する代謝を促進する脱炭酸酵素のbrockerでありこれらL-DOPA製剤と組ませることによって経口投与後BBBを通過する。
前段階におけるL-DOPAの代謝を防ぎ末梢性のSide effectsを軽減させる またL-DOPA単剤での投与と比較し 末梢における代謝を受けにくいためL-DOPA単剤よりBBBを通過する比率が高くなり薬物治療効果を高めることができる
。
長期投与におけるwearing-on現象 on off減少に留意する必要がる。
モノアミン酸化酵素(MAO:monoamine oxidase カテコラミン系物質の代謝酵素-B)阻害剤
monoamine oxidaseはカテコラミンを分解する酵素でありDAを代謝しその絶対量を減少させてしまう。
それはパーキンソン症状への薬物治療効果を低下させる要因となる。
しかし、その酵素を阻害するのがMAO阻害薬であり、 薬剤としてはセレギリン 商品名:エフピーがあり 脳内DAの代謝を抑制し、その絶対量の増加に寄与し治療効果を増大させる作用を持つ。
COMT阻害剤
L-DOPAから3-O-methyl DOPAへの代謝をblockする。
その結果、末梢でのL-DOPAの代謝を防ぐ。
増加したL-DOPAはBBBを通過しそのDAに代謝されその治療効果を発現する。
商品名:エンタカポンがある
ドパミン受容体刺激薬
D2受容体に対するstimulant作用を持つAgonistであるが、麦角系と非麦角系アルカロイドに代表される薬剤に大別される 。
それぞれSide effectsが多く留意する必要がある。
代表的な、Side effectsは麦角系では悪心・食欲不振などの消化器系のものが多く、その他 心弁膜症や肺間質症などの表出・増悪がある 非麦角系薬剤においては比較的消化器症状は少ないが眠気を催すことがある
。
副交感神経遮断薬
比較的軽症の患者、若年性の患者を対象として使用する 振戦、筋固縮、など初期症状に著効を示す。
他の抗Ach作用を持つ薬剤と同様に前立腺肥大症、緑内障、重症筋無力症の患者には禁忌とされている。
高齢者への使用に当たっては注意する。
ドパミン遊離促進薬
ドパミン遊離促進作用を主作用とする、抗Ach薬と同じく若年生、軽症例の例の患者を対象とする また抗ウイルス作用を持ち、リン酸オルセタミビル商品名:タミフルが発売されるまでは、A型インフルエンザに対し用いられることも多かった。
Side effectsは少なく安全に使用でき汎用される L-DOPAと併用で使用されることが多い 。
ノルアドレナリン前駆物質
上述したパーキンソンの症状分類であるHoehn and Yahrの分類における Stage3のすくみ足、や低血圧、起立性低血圧に用いる。
薬剤
A、レボドパ含有製剤
レボドパ:ドパストン、ドパゾール
レボドパ・カルビドパ(10:1)配合:ネオドパストン、メネシット、ドパコール
レボドパ・カルビドパ水和物配合:デュオドーパ
ホスホレボドパ・ホスカルビドパ水和物配合:ヴィアレブ
レボドパ・ベンゼラジド(1:1)配合:マドパー、イーシー・ドパール、ネオドパゾール
レボドパ・カルビドパ水和物・エンタカボン配合:スタレボ
B、モノアミン酸化酵素(MAO-B阻害薬)
セレギリン塩酸塩:エフピー、セレギリン塩酸塩
ラサギリンメシル酸塩:アジレクト
サフィナミドメシル酸塩:エクフィナ
C、カテコールメチルトランスフェラーゼ(COMT)阻害薬
エンタカボン:コムタン、エンタカボン「サンド」
オピカボン:オンジェンティス
D、ドパミン受容体刺激(作用)薬(アゴニスト)
ブロモクリプチンメシル酸塩:パーロデル
ペルゴリンメシル酸塩:ペルマックス、ペルゴリド
カベルゴリン:カバサール
プラミペキソール塩酸塩水和物:ビ・シフロール、プラミベキソール塩酸塩、ミラペックス
ロピニロール塩酸塩:レキップ、ロピニロール、ハルロピ
ロチゴチン:ニュープロ
アポモルヒネ塩酸塩水和物:アポカイン
E、アデノシンA2A受容体拮抗薬
イストラデフィリン:ノウリアスト
F、抗コリン薬
トリヘキシフェニジル塩酸塩:アーテン
ピペリデン塩酸塩:アキネトン、ピペリデン塩酸塩
G、ドパミン遊離促進薬
アマンタジン塩酸塩:シンメトレル
H、ノルアドレナリン前駆物質
ドロキシドパ:ドプス、ドロキシドパ
I、レボドパ賦活薬
ゾニサミド:トレリーフ
J、レストレスレッグス症候群治療薬
ガバペンチンエナカルビル:レグナイト