制吐剤・鎮暈薬

制吐剤・鎮暈薬

病態

嘔吐

胃が強く収縮し、胃の内容物が食道に押し上げられて口から出ることを嘔吐という。

吐き気は、嘔吐しそうな不快感のことで、悪心ということもある。

嘔吐は 呼吸器症状(肺炎、肺梗塞など)や循環器疾患(急性心筋梗塞、大動脈瘤破裂)、消化器系疾患(胃不全麻痺、腸閉塞症、腸内感染症)、代謝・内分泌系疾患(腎不全、肝不全、糖尿病など)、心因性疾患(神経性食欲不振など)、乗り物酔いなどの疾患に随伴して見られる。

ジギタリス製剤(適応:心不全など)、アポモルフィン(パーキンソン病治療薬)などの薬剤が嘔吐を引き起こす原因薬物となり得る場合もある 。

めまい

浮動感、意識喪失感、回転性めまいに分けられる。

浮動感(ふわふわと浮いているような感覚のめまい)の原因は不安、うつ病、パニック障害などによることが多く、

意識喪失感(脳の血流低下や収縮期血圧の低下などが原因で起こることがある)は血圧の低下起立性低血圧、不整脈、貧血などを原因とする脳血液の一過性の不足によるものである 。

回転性めまいは良性発作性めまいメニエル病(内耳のリンパ液が過剰にたまって水ぶくれ(内リンパ水腫)を起こすことで、めまいや難聴、耳鳴りなどの症状を繰り返す病気)によるもの、前庭神経炎、といった末梢性障害と小脳・脳幹出血などによって引き起こされる。

治療薬

制吐剤

D2受容体への拮抗やセロトニン受容体の1種である5HT3受容体に拮抗する事でその作用をしめす。

嘔吐は延髄の網様態によって、もしくは化学受容器引き金体であるCTZによって起こる。

制吐剤は嘔吐中枢やCTZChemoreceptor trigger zoneへの刺激をブロックする。

CTZに関与する受容体は大きく分けて2種類であり 、嘔吐を引き起こす原因となる物質はセロトニン受容体のサブタイ

プである5-HT3、そしてD2受容体である。

5HT3、D2受容体を刺激すると吐き気が生じる。ことからこれらの受容体拮抗薬が制吐作用をしめす。

作用点の違いから中枢性、末梢性、中枢・末梢性の3種に大別される。

・中枢性

D2受容体に拮抗すると制吐作用をしめす。

フェノチアジン系薬剤や、抗ヒスタミン薬がその働きを持つ 。

フェノチアジン系の薬剤としては ペルフェナジン商品名:PZC、プロクロルペラジン商品名:ノバミン、クロルプロマジン 、商品名:コントミン、ウィンタミンなどプロメタジン、商品名ヒベルナ、ピレチアがあり そのD2-blocker作用(これらの薬剤は抗精神病薬として用いられる。抗精神病薬の項を参照)によってChemoreceptor trigger zoneを抑制、結果嘔吐を抑制する。しめす。

これらの薬剤のSide effectsは抗精神病薬に一般的に見られる悪性症候群、錐体外路症状、血圧の低下、口渇、頻脈など 中枢性のもの。

抗ヒスタミン薬としてはドラマミン、トラベルミンが挙げられ内耳迷路、嘔吐中枢に選択的に作用する。

乗り物酔いや メニエル症候群に使用される。

Side effectsは 抗ヒスタミン薬特有の眠気、頭重感、全身倦怠感がある 。


・末梢性制吐薬は中枢性が脳に作用するのに対し、消化管などの臓器に作用して嘔吐を抑える。

代表薬は胃粘膜の知覚を麻痺させて反射性の嘔吐を抑えるストロカインや胃腸機能を促進する自律神経系の副交感神経を抑制するアトロピン、ブスコパン、コリオパンがある。

副交感神経系作動薬は嘔吐を抑制する作用において消化器の痙攣性疼痛を抑えることもでき、治療効果に相加的に作用するという利点がある。

ガスモチンは胃腸機能を調節するが セロトニン5-HT4受容体を刺激する作用を持っている。

オピアト作動薬であるセレキノンやガナトン、DA拮抗薬は慢性胃炎による 悪心・嘔吐に汎用される。

中枢・末梢性制吐薬

5-HT拮抗作用、D2拮抗作用、中枢と末梢の消化器への直接の作用などを併せ持つ薬剤が挙げられる。

プリンペラン、ナウゼリンはその汎用度は高い。

D2 blckerによる消化管の促進作用と、chemoreceptor trigger zone(CTZ)の抑制作用両方を併せ持っていることが大きい。

その為、中枢性嘔吐や反射性嘔吐、どちらにも治療効果を示す。

Side effectsは錐体外路症状に注意する他、悪性症候群などに対しての注意も必要である。

鎮暈薬

その症状の特徴に合わせ脳循環改善薬、代謝改善薬、交感神経刺激薬、向精神薬、抗ヒスタミン薬を使い分けて対処する。
回転性めまいの急性期には、メイロン、低分子デキストランL、トラベルミン、プリンペラン、抗不安薬が有効であり、慢性期にはベタヒスチンメシル酸塩:メリスロン、ジフェニドール塩酸塩:セファドール、イソメニール、イソバイド、抗不安薬、ビタミン製剤が有効である。

薬剤

A、中枢性嘔吐・鎮暈薬(抗ヒスタミン薬および類似薬)

ジメンヒドリナート:ドラマミン

ジフェンヒドラミン・ジプロフィリン配合:トラベルミン

B、5HT3受容体拮抗制吐薬

グラニセトロン塩酸塩:カイトリル、グラニセトロン、オンダセトロン

ラモセトロン:ナゼア

パロキセチン塩酸塩:アロキシ、パロノセトロン「タイホウ」、パロノセトロン

C、ニューキノロン1(NK1受容体拮抗薬)

アプレピタント:イメンド

ホスアプレピタントメグルミン:プロイメンド

ホスネツビタント塩化物塩酸塩:アロカリス

D、交感神経刺激薬

dl-イソプレナリン塩酸塩:イソメニール

E、鎮暈薬

ベタヒスタチンメシル酸塩:メリスロン

ジフェニドール塩酸塩:セファドール