抗てんかん薬
病態
脳はニューロン単位で活動電位を発生させ情報の伝達を行っている。
またその過程ではChemical mediator(ケミカルメディエーター)が関与している。
これらの大小で病理が発生することなどがあるが、てんかんは脳のニューロンにおいて通常よりも大きな過剰な電位の発生により引き起こされる疾患である。
脳において過剰電位が起こった結果、痙攣、意識障害、自律神経障害、精神症状などが生じる。
てんかんは慢性反復性の発作である。
治療薬
治療薬は様々なものが存在する。
これらの薬剤は血中濃度における安全域が他の薬剤と比較して狭くTDM(血中濃度モニタリング)を必要とする。
また、てんかんとは一口にいってもさらに病型別に分類が行われ、それぞれに見合った薬剤を使用しないと効果がないか、効果が十分でないといえる。
そのため治療、薬剤の選択にあたっては病系を分類すること、有効血中濃度域を意識し他の薬剤のように規定された薬用量を使用するのではなく投与量については個人個人に見合った投与量を設定することが必要。
剤形としては錠剤のみならず散剤、液剤(主に散剤)などを使用し、投与量の微妙な調節をする必要がある。
特に小児や高齢者においては薬物の代謝が成人に比べて劣るため投与量に関しては十分留意する必要がある。
以下に挙げる薬剤の作用機序はグルタミン酸系のNaチャネルをblockしたりT型Caチャネルをblockすることによってグルタミン酸神経の脱分極(活動電位の発生)を抑制するものや、GABA(γ-aminobutyric acid)合成酵素促進、GABA分解酵素抑制によってGABA量を増やしGABA神経系を亢進させるものがある (GABA神経系の亢進は脳全体の活動電位を落とすのでてんかん治療において重要な役割をしめる)。
またGABA神経のNa+のチャネルをblockしNa+イオン流入を抑制し活動電位発生を抑えるもの、GABA神経系を直接刺激しその働きを賦活するもの、T型Caイオンチャネルとは別のCaチャネルをblockし脳内のGABA量を増やすものがある。
いずれもGABAの働きを賦活するものである。
1、抗てんかん薬の有効血中濃度域について
薬剤 血中濃度(μg/ml)
PHT phenytoin 10~20(小児:5~20)(15歳以上で急上昇する)
CBZ carbamazepine 3~10
VPA valproate 40~100
PB phenobarbital 10~30
PRM primidone 5~12(PB:15~25)
ESM ethosuximide 40~100
ZNS zonisamide 10~30
TMO trimethadione 300~700
DZP diazepam 0.5~1
NZP nitrazepam 0.04~0.05
CZP clonazepam 0.02~0.08
CLB clobazam 10~20
表2、発作型の分類と選択薬剤
大分類 小分類 第一選択薬 第二選択薬
部分発作 単純部分発作 CBZ PHT、ZNS
複雑部分発作
二次正全般化
全般発作 欠神発作 VPA ESM
強直間代発作 PB、CLB
ミオクロニー発作 CZP
脱力発作 ESM
薬剤
バルビツール酸系
フェノバルビタール:フェノバール
フェノバルビタールナトリウム:ノーベルバール、ワコバルビタール、ルピアール
プリミドン:プリミドン
ベンゾジアゼピン系
クロナゼパム:リボトリール、ランドセン
ジアゼパム:ダイアップ
クロバザム:マイスタン
ミダゾラム:ミダフレッサ、ブコラム
ロラゼパム:ロラビタ
主にNaチャネル阻害
フェニトイン:アレビアチン、ヒダントール
ホスフェニトインナトリウム水和物:ホストイン
エトトイン:アクセノン
カルバマゼピン:テグレトール
ラモトリギン:ラミクタール
ラコサミド:ピムバット
主にCaチャネル阻害
エトスクシミド:エピレオプチマル、ザロンチン
主にNa/Caチャネル阻害
ゾニサミド:エクセグラン
トピラマート:トピナ
複合作用
バルプロ酸ナトリウム:デパケン、バルプロ酸ナトリウム
バルプロ酸ナトリウム水和物:デパケンR、セレニカR
ガバペンチン:ガバペン
主にSV2A結合
レベチラセタム:イーケプラ、レベチラセタム
AMPA受容体拮抗
ベランパネル水和物:フィコンパ
配合剤
複合アレビアチン、ヒダントールD、E、F
その他
トリメタジオン:ミノアレ
スルチアム:オスポロット
アセチルフェネトライド:クランポール
Dravet症候群治療薬
フェンフルラミン塩酸塩:フィンテプラ
Lennnox-Gasuaut症候群治療薬
ルフィナミド:イノベロン
点滴てんかん治療薬
ビガバトリン:サブリル