抗精神病薬、抗うつ薬、気分安定薬、精神刺激薬
統合失調症
精神分裂病として呼ばれてきたが偏見(スティグマ)が強いとの面から統合失調症と改められた。
原因は多因子的であるとされ遺伝的要因、環境的要因に関しての多くの研究がなされている。
10代から30代までに発症、幻覚、妄想、思考障害、意欲低下、無関心、感情鈍麻、社会的引きこもりなどの特徴を見せる。
病因として考えられるものにはドパミン受容体の異常を原因とする ドパミン仮説が最も有力とされている。
また最近の研究ではNMDA受容体の異常も関与していると考えられている。
日本における患者の数はおよそ73万人であり一生の間に発病する可能性は1%程度とされている。
初期に見られる症状として頭重感、倦怠感、易疲労感、睡眠障害などの身体的症状が中心である 幻覚や妄想はその後見られる。
そして意欲減退、無関心などの陰性症状が見られる 。
診断にあたっての基準はWHOのICD及び、APAのDSMのガイドラインが参照される 。
治療の中心は以下に示す薬物療法が中心となる 。
しかし薬物療法も再発を繰り返す患者に関してはその効果は低くなってくるそのため、心理学的アプローチである認知行動療法やSST (social skills
training)の面からの治療やリハビリテーション(作業療法)も併用してみることが再発予防へプラスに働く 。
またソーシャルサポートの体勢完備もその再発防止に有効。
フェノチアジン系抗精神病薬
1952年に初めて開発されその後の抗精神病薬の走りとなったクロルプロマジンがこの系に含まれる 主作用としてD2受容体をブロックする作用をもつ、しかしムスカリン性アセチルコリン受容体までもブロックする他、自律神経系のα-1受容体をもブロックしてしまう。
ブチロフェノン系抗精神病薬
クロルプロマジンを精神医学に導入したH Laboritが関連化合物として1958年にハロペリドールを開発したのが始まりである 。ブチロフェノン系はムスカリン性抗コリン作用は少ないが錐体外路症状(EPS:extrapyramidal symptpm)を示しやすい。
α1受容体のブロック作用は弱いが、鎮吐作用は強い 汎用度は極めて高くこの系のプロトタイプであるハロペリドールの1976~1985年における処方量は米国で2位であった。
ベンザミド系抗精神病薬
もともとは制吐作用の強いメトクロプラミドが1964年に開発されたのがきっかけでこの薬剤の中枢におけるドパミン受容体のブロック作用に注目して誘導隊が数100にわたって開発された。そしてその中で1968年に生まれたのがこの系の代表とも言えるスルピリドである。 D1受容体をブロックする作用は弱い者の抗コリン作用やα-1をブロックする作用は弱く、幻覚、妄想を抑える作用は強い。また副作用としての錐体外路症状も出にくいという利点がある 用量依存的に作用を発現する。
セロトニン・ドパミン・アンタゴニスト serotonin-dopamine-antagonist(SDA)
セロトニン(5-HT)ここではセロトニン仮説については触れていないが 受容体とドパミン受容体をブロックする。 SDA抗精神病薬の中ではリスパダール(リスペリドン)が国際的にも評価が高い。
日本での使用は1996年から 5-HT拮抗作用によってドパミン機能を抑えるために錐体外路症状が低いとされている。
MARTA(multi-acting-receptor-targeted-antipsychotics)multi-acting-receptor-targeted-antipsychotics(MRTA)、多元受容体標的化抗精神病薬 抗精神病薬では最も新しい。
多数の受容体を介して統合失調症の陰性症状、陽性症状、認知障害、不安症状、抑うつ症状などに効果を持つ 主に精神症状に関わるD1、D2,D3,D4,5HT2A、5HT2C、5HT1A、5-HT6、α-1、α-2、Musc、H1などの多くの受容体に対しアンタゴニスト様作用を持つ。
DSSドパミン系安定剤dopamine system stabilizer(DSS)
ドパミン自己受容体に関する概念はCarlssonらによって提唱された。
中枢のドパミン作動性神経の前部において、ドパミンの合成・放出、及び発火を抑制的に調節する事が解っている 。1972年以降ドパミンシナプス前部と後部においてはその働きが異なるという事がわかった。
1978年ドパミン自己受容体に働いた低用量アポモルフィンが統合失調症の患者を改善させたドパミンのパーシャルアゴニストは場合によって、アゴニストにもアンタゴニストにもなり得る。
その点からドパミン神経系をstabikizeできる そして統合失調症の陰性症状、陽性症状を改善させるためにドパミン神経全部のアゴニストとして、またドパミン神経後部のD2受容体の強力なアゴニストとして1987年に開発されたのがアリピプラゾールである。
うつ病
WHOの報告で2020年、うつ病は全ての疾患の中で経済的に最も大きな打撃を与えると予測されている。
重症化を防ぐために早期発見・早期治療が必要不可欠であるとされている。
しかし、内科的な診断を下され非顕在化してしまう事が多く早期的治療のタイミングを逃してしまう事が多くある。
また完全な治療を行われない例では患者が自殺に至ることが多い。
初期の診断レベルで以下のような症状があればうつ病を疑うべきである。
睡眠障害、疲労・倦怠感、食欲不振、頭重・頭痛、性欲減退、便秘・下痢、口渇、体重減少、めまい、月経異常など またうつ症状の度合いによっても対応を迅速に変化させることが必要となる。
三環系抗うつ薬(tricyclic antidepressants TCA)
抗うつ薬は第1世代、第2世代、第3世代、第4世代に分類される。
第1世代は以下に示す三環形抗うつ薬とよばれるものである。 構造はいずれも類似している。
これらはセロトニン(5-HT)とノルアドレナリン(NA)の非選択的な取り込み阻害作用をもっている。
この世代の抗うつ薬は副作用が多く理由として目的とする受容体以外の他の受容体をブロックしてしまう事にある。
特にムスカリン性アセチルコリン受容体やアドレナリンα-1受容体を遮断してしまうものが多い。
しかしトフラニールやアナフラニールなど使用頻度は現在でも高い。
最も古い抗うつ薬であるのにこれだけ汎用されている理由として改善率の高さが挙げられる。
うつ病に対する改善率は7割~8割であるとも言われている。
TCAの特徴として3級アミンは2級アミンに比べて鎮静作用は強い、抗コリン作用も強い。鎮静、体重増加の副作用はH1親和性と関連がある、起立性低血圧はα1受容体に対する親和性に関連がある。心伝障害はOH基をもつ代謝物の量に関連している、性機能障害には5-HT受容体が関係しているなど。
四環系抗うつ薬(tetracyclic antidepressants)
第2世代抗うつ薬は日本において1980年代以降に発売された 。
第1世代抗うつ薬と比較すると抗コリン作用が弱められているので副作用が減弱されている。
第1世代で報告されていた心循環系の副作用は第2世代になって大幅に軽減されており、過料投与による安全性も確認されている。
選択的セロトニン再取込み阻害薬(selective serotonin reuptake inhibitor SSRI)
第3世代は選択的にセロトニンのみの再取り込みを阻害する。
SSRIには以下にあるようにフルボキサミン、パロキセチン、セルトラリンがある。
最初に承認されたのはフルボキサミンで19994月、次に承認されたのがパロキセチンで2000年11月、セルトラリンは2006年7月に市販された 3環形、4環形と異なりSSRIは第3世代抗うつ薬と呼ばれる。
ほとんどの各種神経伝達物質との親和性は低く、心、血管副作用や抗コリン性副作用などの点で第1世代、第2世代の抗うつ薬よりも優れている 安全性においても比較的優れている。
セロトニン・ノルアドレナリン再取込み阻害薬(serotonin noradrenaline reuptake inhibitor SNRI)
第4世代はセロトニン・ノルアドレナリン両方に対しての再取り込み抑制作用を持つ。
第3世代のSSRIに比べて効果発現が少し早いと言われている。
1週間以内に効果が見られ2週間後は少しずつ効果が高まってくると言われている。
ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性薬(Noradrenergic and Specific Serotonergic Antidepressant NaSSA)
ミルタザピン:リフレックスがある。ノルアドレナリンの遊離を促進、セロトニンの働きを改善。
薬剤の分類、成分名と商品名
A、定型抗精神病薬
A-1、フェノチアジン系抗精神病薬
クロルプロマジン塩酸塩:ウインタミン、コントミン
レボメプロマジン:ヒルナミン、レボトミン
ベルフェナジン:ピーゼットシー、トリラホン
フルフェナジンマレイン酸塩:フルメジン、フルデカシン
プロクロルペラジンマレイン酸塩:ノバミン
プロペリシアジン:ニューレプチル
A-2、ブチロフェノン系抗精神病薬
ハロペリドール:セレネース、ハロペリドール
ハロペリドールデカン酸エステル:ハロマンス
ブロムペリドール:ブロムペリドール
ピパンペロン塩酸塩:プロピタン
スピペロン:スピロペタン
チミペロン:トロペロン
A-3、ベンザミド系抗精神病薬
スルピリド:ドグマチール
スルピリド塩酸塩:バルネチール
チアプリド塩酸塩:グラマリール
ネモナプリド:エミレース
B、非定型抗精神病薬
B-1、SDA セロトニン・ドパミン拮抗薬
リスペリドン:リスパダール、リスパダールコンスタ、リスペリドン
パリペリドン:インヴェガ
パリペリドンパルミチン酸エステル:ゼブリオン
ブロナンセリン:ロナセン、ブロナンセリン「DSPB」
ペロスピロン塩酸塩水和物:ルーラン
ルラシドン塩酸塩:ラツーダ
B-2、多元受容体作用抗精神病薬(MARTA)
オランザピン:ジプレキサ、オランザピン
クエチアピンフマル酸塩:セロクエル、クエチアゼピン、ビプレッソ
クロザピン:クロザリル
アセナピンマレイン酸塩:シクレスト
B-3、ドパミン受容体部分作動薬(DPA)
アリピプラゾール:エビリファイ、アリビプラゾール
ブレクスピプラゾール:レキサルティ
その他抗精神病薬
ゾデピン:ロドピン
クロカプラミン塩酸塩水和物:クロフェクトン
モサプラミン塩酸塩:クレミン
C、抗うつ薬
C-1、三環系抗うつ薬(TCA)
クロミプラミン塩酸塩:アナフラニール
ノルトリプチリン塩酸塩:ノリトレン
アミトリプチリン塩酸塩:トリプタノール
アモキサピン:アモキサン
イミプラミン塩酸塩:トフラニール
トリミプラミンマレイン酸塩:スルモンチール
ロフェラミン塩酸塩:アンプリット
ドスレピン塩酸塩:プロチアデン
C-2、四環系抗うつ薬
ミアンセリン塩酸塩:テトラミド
マプロチリン塩酸塩:ルジオミール、マロプチリン塩酸塩「アメル」
セチプリジンマレイン酸塩:テシプール
C-3、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)
エスシタゾラムブラムシュウ酸塩:レクサプロ、エスシタロブラム
セルトラリン塩酸塩:ジェイゾロフト
パロキセチン塩酸塩水和物:パキシル、パロキセチン「SPKK」、パロキセチン、パキシルCR
フルボキサミンマレイン酸塩:デプロメール、ルボックス
C-4、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)
デュロキセチン塩酸塩:サインバルタ、デュロキセチン
ベンラファキシン塩酸塩:イフェクサーSR
ミルナシプラン塩酸塩:トレドミン
C-5、NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性)
ミルタザピン:リフレックス、レメロン、ミルタザピン
C-6、S-RIM
ボルチオキセチン臭化水素酸塩:トリンテリックス
その他
トラゾドン塩酸塩:レスリン、デジレル
D、気分安定薬
炭酸リチウム:リーマス、炭酸リチウム「大正」
E、精神刺激薬
モダニフィル:モディオダール
パモリン:ベタナミン
メタンフェタミン塩酸塩:ヒロポン
F、ADHD治療薬
メチルフェニデート塩酸塩:リタリン、コンサータ
リスデキサンフェタミンメシル酸塩:ビバンセ
アトモキセチン塩酸塩:ストラテラ、アトモキセチン
グアンファジン塩酸塩:インチュニブ