膵疾患治療薬
膵臓の働き
膵臓には主に以下の3つの機能がある。
消化酵素と食べものが混ざり合う十二指腸に、消化酵素を含んだ膵液を分泌する。
血糖値の調節を助けるインスリンとグルカゴンというホルモンを分泌する。
胃からくる酸を中和するのに必要な大量の炭酸水素ナトリウム(重曹の成分)を十二指腸に分泌する。
膵臓の炎症の原因としては、胆石、アルコール摂取が主。
他、薬剤、一部のウイルス感染症のほか、あまり一般的でない原因もある。
膵炎は通常は急に発生し、数日以内に治まるが、数週間続くこともある。
この場合は急性膵炎と呼ばれる。
しかし、炎症が持続し、徐々に膵臓の機能を破壊するケースもある。この場合は慢性膵炎と呼ばれる。
治療薬物としては蛋白分解酵素阻害薬が主として用いられる。
輸液は、電解質Na+、K+などの補正や、アシドーシス(体液の酸性化)の補正を目的とし、併せて中心静脈のモニターを行う。
また、膵自身にダメージを与える酵素を阻害する目的で酵素活性阻害薬の大量投与を持続点滴にて行い膵酵素の分泌を食事消化の面から抑える目的で絶食、絶飲を行う。
栄養の不良は経腸栄養薬:EN(腸にダイレクトに補充:通常の消化過程を経ず、膵臓に関与しない)やTPNによる管理を行う。
上腹部痛、みぞおちから左上腹部痛、背部痛における鈍痛から激痛までの疼痛に対しては疼痛緩和薬を用いる。
また、膵疾患に伴う感染を考慮しての抗菌薬による腸管内殺菌を行う。
感染による壊死性の膵炎に対し外科的処置を行う。
蛋白分解酵素阻害薬として用いられる薬物は経口薬でよくカモスタットメシル酸塩(フオイパン)を投与する フオイパンは経口投与で速やかに効果を発現しその主体は膵炎におけるkey enzymeであるトリプシンをブロックする。
また、膵炎に伴う疼痛緩和を目的としNSAIDs、ジクロフェナクナトリウム(ボルタレン)、インドメタシン(インダシン)、非麻薬性鎮痛薬である塩酸ペンタゾシン(ペンタゾシン)を用いる。
他、疼痛に伴う精神症状に、抗欝薬、抗不安薬などを用いる。
非対償期には消化酵素阻害薬ガベキサートメシル酸塩(FOY)の輸液による大量投与に合わせビタミンの補充も輸液にて行う。
膵臓のランゲルハンスβ島ではインスリン分泌を担っており、その障害からくる膵性糖尿に対してはインスリンの投与を行う。
非対償期には消化酵素製剤やインスリンを用いる。
慢性膵炎時の基本的薬物療法
有痛時 鎮痛薬 ボルタレン、インダシン、ペンタゾシン
鎮痙薬 ブスコパン、コリオパン
病態不安定時 蛋白分解酵素阻害薬 フオイパン
COMT阻害薬 コスパノン
病態安静時 総合消化酵素阻害薬、整腸剤、制酸剤(H2ブロッカー)
薬剤
蛋白分解酵素阻害薬
ガベキサートメシル酸塩:エフオーワイ
カモスタットメシル酸塩:フオイパン
ナファモスタットメシル酸塩:フサン、ナファモスタットメシル酸塩
ウリナスタチン:ミラクリッド
膵酵素補充薬
パンクレリパーゼ:リパンクレオン