膵疾患治療薬
膵臓の働き
膵臓は食物の消化吸収や生体内の生理活性に働く様々な酵素の分泌や、血糖調節に働くホルモン(インスリン)の分泌、さらに胃から十二指腸に流れた胃酸の中和などに働く。
膵疾患は自己分泌液により膵臓自体が消化されるというもので、各種膵酵素トリプシンやホスホリパーゼA2、エラスターゼ(いずれもタンパク質、脂質、多糖をアミノ酸、脂肪、ブドウ糖に分解する加水分解酵素の一種)による膵臓本来の過剰な働きによって膵臓自身がダメージを受け炎症や浮腫、出血、壊死を起こす疾患。
膵疾患は大きく2つに分類され急性膵炎と慢性膵炎に分類される。
治療薬物としては蛋白分解酵素阻害薬が主として用いられる。
急性膵炎は予後不良の場合が多く、慢性膵炎は適切な薬物治療で予後は比較的良い。
急性膵炎の薬物治療は膵周囲への体液漏出が引き起こす循環不全の改善の目的で輸液を使う。
輸液は(電解質Na+、K+などの補正や、アシドーシス(体液の酸性化)の補正を目的とし、併せて中心静脈のモニターを行う。
また上記の膵自身にダメージを与える酵素を阻害する目的で酵素活性阻害薬の大量投与を持続点滴にて行い膵酵素の分泌を食事消化の面から抑える目的で絶食、絶飲を行う。
栄養の不良は経腸栄養薬:EN(腸にダイレクトに補充:通常の消化過程を経ず、膵臓に関与しない)やTPNによる管理を行う。
上腹部痛、みぞおちから左上腹部痛、背部痛における鈍痛から激痛までの疼痛に対しては疼痛緩和薬を用いる。
また、膵疾患に伴う感染を考慮しての抗菌薬による腸管内殺菌を行う。
感染による壊死性の膵炎に対し外科的処置を行う。
慢性膵炎は対償期、移行期、非対償期に分けられる。
さらに対償期は急性増悪期と間欠期に分けられる。
急性増悪期には急性膵炎時の治療に従う。
間欠期には食事療法と消化酵素の補充療法を主体とする 蛋白分解酵素阻害薬として用いられる薬物はこの時期は経口薬でよくカモスタットメシル酸塩(フオイパン)を投与する フオイパンは経口投与で速やかに効果を発現しその主体は上述した膵炎におけるkey enzymeであるトリプシンをブロックする。
また、膵炎に伴う疼痛緩和を目的としNSAIDs、ジクロフェナクナトリウム(ボルタレン)、インドメタシン(インダシン)、非麻薬性鎮痛薬である塩酸ペンタゾシン(ペンタゾシン)を用いる。
他、疼痛に伴う精神症状に、抗欝薬、抗不安薬などを用いる。
非対償期には消化酵素阻害薬ガベキサートメシル酸塩(FOY)の輸液による大量投与に合わせビタミンの補充も輸液にて行う。
膵臓のランゲルハンスβ島ではインスリン分泌を担っており、その障害からくる膵性糖尿に対してはインスリンの投与を行う。
非対償期には消化酵素製剤やインスリンを用いる。
慢性膵炎時の基本的薬物療法
有痛時 鎮痛薬 ボルタレン、インダシン、ペンタゾシン
鎮痙薬 ブスコパン、コリオパン
病態不安定時 蛋白分解酵素阻害薬 フオイパン
COMT阻害薬 コスパノン
病態安静時 総合消化酵素阻害薬、整腸剤、制酸剤(H2ブロッカー)
薬剤
蛋白分解酵素阻害薬
ガベキサートメシル酸塩:エフオーワイ
カモスタットメシル酸塩:フオイパン
ナファモスタットメシル酸塩:フサン、ナファモスタットメシル酸塩
ウリナスタチン:ミラクリッド
膵酵素補充薬
パンクレリパーゼ:リパンクレオン