肝疾患治療薬
肝臓の働き
肝臓の主な働きは、
代謝・貯蔵・解毒・胆汁の生成。
代謝
消化器官からやってきた栄養を身体の各器官が必要とする形に変えたり、エネルギーとしてつくり出すはたらきのこと。食事から摂った栄養分の全てをそのままの形で利用することはできない。胃や腸などの消化器官で消化された後、肝臓に送られて代謝され、体内で使えるようになる。肝臓は代謝の中心を担う。
貯蔵
脳の主要なエネルギー源であるブドウ糖(グルコース)を供給しているのが肝臓。いつでも補給ができる態勢に整えつつも、血糖値が上がりすぎることがないように、肝臓はブドウ糖をグリコーゲンの形で備蓄。
解毒
アルコール、栄養素を代謝する時や過度の運動によって体内で発生するアンモニアなど、身体にとって有害となる物質を無害なものへと処理。
胆汁の生成
肝臓では、コレステロールと胆汁酸から胆汁をつくり出している。胆汁にはいくつかの役割があり、脂質の消化吸収を助けるはたらきや、肝臓で処理され古くなった赤血球や微量金属などの不要物を排泄する役割などがあります。また、胆汁の材料にすることで、血中のコレステロール濃度を調整するというはたらきもある。胆汁は胆嚢に貯蔵され、脂肪分が体内に入ると、胆管を通って十二指腸と小腸に出て行きます。
肝疾患
肝臓がダメージを受けると急性肝炎→慢性肝炎→肝硬変→肝臓がんへと症状が進行する。
国内の慢性肝炎、肝硬変、肝がんの原因はHCV(C型)が50%、HBV(B型)が12%と、大部分がウイルス性。
慢性肝炎、肝硬変、肝がんの原因の50%を占めるC型肝炎の治療には抗ウイルス治療によるウイルス駆除が目的となる。
脂肪肝の原因は肥満、糖尿病に伴う過栄養性とアルコール性のもの。
アルコール性肝障害は肝硬変の20%を占める。
アルコールの過剰摂取は短期間で肝硬変になり易い。その際、低栄養、肥満、過栄養にも注意が必要となる。
自己免疫疾患も肝炎を引き起こす。自己免疫性肝疾患はAIHと呼ばれる。PSLが主に用いられる。
肝硬変は腹水、肝性脳症、肝癌などに繋がる。C型による肝硬変ではDAA製剤が、B型では核酸アナログが用いられる。
肝硬変患者(肝機能低下)の血液中アミノ酸を分析すると、BCAAが減少しAAAが増加して、BCAAとAAAとの比率をしめす(フィッシャー比:BCAA/AAA)が低下
BCAA(Branched Chain Amino Acid 分岐鎖アミノ酸)とは、バリン、ロイシン、イソロイシンの3つのアミノ酸総称。
AAA(Aromatic Amino Acid芳香族アミノ酸)とは、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンなどのアミノ酸総称。
BCAAの3つのアミノ酸や、AAAの3つのアミノ酸は体内で作ることが出来ない。
肝臓はAAAも利用するが、筋肉ではBCAAをつかう。
肝機能が低下すると・・・蛋白質の合成ができない⇒蛋白質不足⇒アルブミン不足⇒腹水になりやすい
肝臓の代わりに筋肉でアルブミンを作る⇒この時、BCAAが使われる
肝機能が低下すると・・・栄養が貯蔵できない⇒エネルギーが作れない⇒エネルギー不足
肝臓の代わりに筋肉でエネルギーを作る⇒この時、BCAAが使われる
肝臓の代わりに筋肉でアンモニアを解毒する⇒この時、BCAAが使われる
結果、血液中のBCAAがAAAに対し相対的に減少する。
そのため肝硬変(肝機能低下時)ではBCAAを補給したほうがよいという事になり、経口BCAA製剤であるリーバクト、アミノレバン、へパンEDなどがその補正に使用される。
肝機能が低下すると・・・アンモニアが解毒できない⇒肝性脳症になりやすい
肝硬変時の肝性脳症にはラクツロース、ラグノスゼリーが用いられる。
低アルブミン時の腹水には減塩と利尿剤の使用を行う事が多い。
https://www.aska-pharma.co.jp/kansikkan/disease/
薬剤
インターフェロン製剤
インターフェロン製剤は、抗ウイルス作用(C、B型)や腫瘍増殖抑制作用、免疫調節作用などを有する。
インターフェロン製剤とバビリン:レベトールとの併用は著効を示す場合が多い。
抗肝炎ウイルス薬
B型肝炎に関しては現在、完全に駆除できる治療法はない。
感染細胞の増殖抑制効果を持ち、肝炎、肝硬変の進行を抑えるが完全にウイルスを排除できない。
C型肝炎治療の中心はINF(免疫系に関わるサイトカインに作用し間接的に肝炎ウイルスに作用)や、DAA製剤(直接作用型抗ウイルス薬)がある。
近年では、その治療はDAA製剤(直接作用型抗ウイルス薬)へと移行している。
INFが注射薬であるのに対しDAAは内服薬で簡便。C型肝炎ウイルス治療薬が主体。
肝機能改善薬
グリチルリチン製剤である強力ミノファーゲンC、ウルソデオキシコール酸がある。
肝庇護剤とも呼ばれる注射薬などは一過性に肝機能における標準検査値を下げる効果を持つ。
強力ミノファーゲンCには若干のNK細胞の賦活化やINFとの正の相互作用を持つことが分かってきておりHBV、HCV慢性肝炎にも効果が期待できる。
内服薬の定期的な服薬は慢性肝炎への移行 肝臓癌への移行を抑制する。
ウルソデオキシコール酸は胆石溶解、肝内での胆汁うっ滞の作用による胆石や原発性胆汁性肝炎、自己免疫性肝炎、原発性硬化性胆肝炎、またHCVのINF使用抵抗例に効果を示す。
肝不全治療薬
肝機能の低下による高アンモニア血症や低アルブミンなどの改善を目的とする。
高アンモニア血症
1. アンモニアの発生源:
食事で摂取したタンパク質が腸内細菌によって分解されると、アンモニアが生成される。
2. 肝臓での解毒作用:
生成されたアンモニアは門脈を通って肝臓に運ばれる。
肝臓は、アンモニアを尿素という無害な物質に代謝し、尿として体外へ排泄する。
肝機能が低下すると、高アンモニア血漿を起こす。
増加した血中のアンモニアは脳に影響を及ぼし肝性脳症を発症する場合がある。
ラクツロースは腸内細菌により分解され酸を生成し酸性度を高める作用をあらわすため、腸内におけるアンモニア産生抑制、吸収を阻害する。(腸内の酸性度が高い(pHが低い)とアンモニアの腸管からの吸収が低下するため)
低アルブミン
アルブミンは、主に肝臓でアミノ酸から合成される血漿タンパク質で血液中の蛋白質の約60%を占める。
血液の浸透圧(水分を血管内に保つ力)の保持に必要・肝硬変になるとアルブミンが不足し、水分を血管内に保てなくなるため腹水が起こる
また、肝機能が低下すると、アミノ酸の中で分岐鎖アミノ酸(BCAA:バリン、ロイシン、イソロイシンの総称、分岐鎖アミノ酸)が低下する。
BCAAを主成分とする製剤(リーバクト、アミノレバン、へパンED)、グルタミン酸、グルタミン酸アルギニンなどの薬剤が効果を示す。
漢方薬
甘草に含まれるグリチルリチン酸が肝保護作用を持つ。
肝硬変の症状を抑制するものが中心。
副腎皮質ステロイド
薬物性肝障害、劇症肝炎、重症アルコール性肝炎で用いる。ウイルス性には用いない。
薬剤
大別して1、インターフェロン製剤、2、抗HCV薬、3、抗B型肝炎ウイルス薬、4、肝機能改善薬、5、肝不全治療薬、6、金属解毒薬に分けられる。
インターフェロン製剤
インターフェロンアルファ:スミフェロン 注射
インターフェロンベータ:フエロン 注射
ペグインターフェロンアルファ-2a:ベガシス 皮下注
抗C型ウイルス薬(RNAポリメラーゼ阻害)
リバビリン:レベトール 内服薬
抗C型ウイルス薬(配合剤) DAA製剤
レジバスビルアセトン付加物・ソホスブビル配合:ハーボニー 内服
グレカブレビル水和物・ピブレンタスビル配合:マヴィレット 内服
アオホスブビル・ベルバスビル配合:エプクルーサ 内服
抗B型ウイルス薬
ラミブジン:ゼフィックス
エンテカビル水和物:バラクルード、エンテカビル
テノホビルジソプロキシフマル酸塩:テノゼット
テノホビルアラフェナミドフマル酸塩:ベムリティ
肝機能改善薬
グリチルリチン製剤:強力ミノファーゲンシー
タウリン:タウリン
チオブロニン:チオラ
ポリエンホスファチジルコリン:EPL 高脂血症にも用いる
ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミン:リバオール
グルタチオン:タチオン
グリチルリチン製剤:グリチロン
肝臓製剤
肝臓加水分解物:レナルチン
肝臓抽出製剤:アデラビン9号
肝免疫賦活薬
プロパゲルマニウム:セロシオン
肝不全治療薬
L-アルギニンL-グルタミン酸塩水和物:アルギメート
アミノ酸配合:アミノレバン、モリノヘパミン BCAA
分岐鎖アミノ酸製剤:リーバクト BCAA
ラクツロース:モニラック、ラクツロース「コーワ」、ラクツロース、*ラグノスゼリー
ラクチトール水和物:ポルトラック
リファキシミン:リフキシマ
肝中心静脈閉塞薬症治療薬
デフィノブロチドナトリウム:デファイテリオ
金属解毒薬
酢酸亜鉛水和物:ノベルジン 亜鉛薬は食事中の銅吸収阻害をするために、ウィルソン病の銅吸収を妨げる薬