肝疾患治療薬

肝疾患治療薬

肝臓の働き

肝臓の主な働きは、

肝臓(かんぞう)のはたらき
【1】 胆汁(たんじゅう)を作る
胆汁は、脂肪を消化するために必要な液体で、黄緑色をしている。

胆汁は、肝細胞(かんさいぼう)から絶えまなく分泌(ぶんぴつ)。

肝細胞では、ひ臓から運ばれてきたビリルビンという黄色い色素を水に溶けやすいように変化させて胆汁の中に排出(はいしゅつ)。

【2】 栄養素を貯え、変化させたりする
多くの食べ物はそのままではからだに吸収されない。
栄養素としてからだが吸収できるように肝臓で変化させる。

例:ぶどう糖をグリコーゲンに変えて貯えておき、必要な時にエネルギーとして使うために体内へ送り出す。
骨髄(こつずい)で必要な赤血球をつくるための葉酸(ようさん)や、ビタミンB12を貯えておき、必要な時に送り出す。
アミノ酸から、血液に必要なアルブミン〈たんぱく素〉とフィブリノゲン〈線維素(せんいそ)〉を作り、血液の中に送り出す。
【3】 毒を中和する
体内に入った毒物を分解し、毒のないものに変える。

例:お酒のアルコールやたばこにふくまれるニコチンを中和。
人が運動をすると筋肉がぶどう糖を燃やし、乳酸を作り出す。 乳酸が血液中に溜(た)まると、からだは疲(つか)れを感じるといわれている。
肝臓では乳酸をグリコーゲン〈糖原(とうげん)〉に変える。

【4】 免疫細胞(めんえきさいぼう)が活躍している
肝臓のマクロファージ※といわれているクッパー細胞がからだに入ってきた異物を貪食(どんしょく)。
NK細胞がウイルスに感染(かんせん)した細胞や老化した細胞を処理。
免疫をコントロールするT細胞が免疫細胞の指令役のはたらきをする。
※マクロファージ:外からの異物である細菌(さいきん)やウイルスを食べてしまう細胞で、大食(たいしょく)細胞といわれてる。

https://www.chugai-pharm.co.jp/ptn/medicine/karada/karada009.html

肝疾患

肝臓がダメージを受けると急性肝炎→慢性肝炎→肝硬変→肝臓がんへと症状が進行する。

国内の慢性肝炎、肝硬変、肝がんの原因はHCV(C型)が50%、HBV(B型)が12%と、大部分がウイルス性。

慢性肝炎、肝硬変、肝がんの原因の50%を占めるC型肝炎の治療には抗ウイルス治療によるウイルス駆除が目的となる。

脂肪肝の原因は肥満、糖尿病に伴う過栄養性とアルコール性のもの。

アルコール性肝障害は肝硬変の20%を占める。

アルコールの過剰摂取は短期間で肝硬変になり易い。その際、低栄養、肥満、過栄養にも注意が必要となる。

自己免疫疾患も肝炎を引き起こす。自己免疫性肝疾患はAIHと呼ばれる。PSLが主に用いられる。

肝硬変は腹水、肝性脳症、肝癌などに繋がる。C型による肝硬変ではDAA製剤が、B型では核酸アナログが用いられる。

肝硬変患者(肝機能低下)の血液中アミノ酸を分析すると、BCAAが減少しAAAが増加して、BCAAとAAAとの比率をしめす(フィッシャー比:BCAA/AAA)が低下

BCAA(Branched Chain Amino Acid 分岐鎖アミノ酸)とは、バリン、ロイシン、イソロイシンの3つのアミノ酸総称。

AAA(Aromatic Amino Acid芳香族アミノ酸)とは、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンなどのアミノ酸総称。

BCAAの3つのアミノ酸は体内で作ることが出来ない。AAAの3つのアミノ酸は体内で作ることが出来ない。

https://www.otsuka.co.jp/health-and-illness/liver-cirrhosis-nutritional-therapy/nutrition-and-prognosis/

肝臓はAAAも利用するが、筋肉ではBCAAをつかう。

肝臓の働き①蛋白質の合成

肝機能が低下すると・・・蛋白質の合成ができない⇒蛋白質不足⇒アルブミン不足⇒腹水になりやすい

肝臓の代わりに筋肉でアルブミンを作る⇒この時、BCAAが使われる

肝臓の働き②栄養の貯蔵

肝機能が低下すると・・・栄養が貯蔵できない⇒エネルギーが作れない⇒エネルギー不足

肝臓の代わりに筋肉でエネルギーを作る⇒この時、BCAAが使われる

肝臓の働き③有害物質の解毒・分解

肝機能が低下すると・・・アンモニアが解毒できない⇒肝性脳症になりやすい

肝臓の代わりに筋肉でアンモニアを解毒する⇒この時、BCAAが使われる

結果、血液中のBCAAがAAAに対し相対的に減少する。

そのため肝硬変(肝機能低下時)ではBCAAを補給したほうがよいという事になり、経口BCAA製剤であるリーバクト、アミノレバン、へパンEDなどがその補正に使用される。

肝硬変時の肝性脳症にはラクツロース、ラグノスゼリーが用いられる。

低アルブミン時の腹水には減塩と利尿剤の使用を行う事が多い。

https://www.aska-pharma.co.jp/kansikkan/disease/

薬剤

インターフェロン製剤

インターフェロン製剤は、抗ウイルス作用(C、B型)や腫瘍増殖抑制作用、免疫調節作用などを有する。

インターフェロン製剤とバビリン:レベトールとの併用は著効を示す場合が多い。

抗肝炎ウイルス薬

B型肝炎に関しては現在、完全に駆除できる治療法はない。

感染細胞の増殖抑制効果を持ち、肝炎、肝硬変の進行を抑えるが完全にウイルスを排除できない。

C型肝炎治療の中心はINF(免疫系に関わるサイトカインに作用し間接的に肝炎ウイルスに作用)や、DAA製剤(直接作用型抗ウイルス薬)がある。

近年では、その治療はDAA製剤(直接作用型抗ウイルス薬)へと移行している。

INFが注射薬であるのに対しDAAは内服薬で簡便である。C型肝炎ウイルス治療薬が主体。

肝機能改善薬

グリチルリチン製剤である強力ミノファーゲンC、ウルソデオキシコール酸がある。

肝庇護剤とも呼ばれる注射薬などは一過性に肝機能における標準検査値を下げる効果を持つ。

強力ミノファーゲンCには若干のNK細胞の賦活化やINFとの正の相互作用を持つことが分かってきておりHBV、HCV慢性肝炎にも効果が期待できる。

内服薬の定期的な服薬は慢性肝炎への移行 肝臓癌への移行を抑制する。

ウルソデオキシコール酸は胆石溶解、肝内での胆汁うっ滞の作用による胆石や原発性胆汁性肝炎、自己免疫性肝炎、原発性硬化性胆肝炎、またHCVのINF使用抵抗例に効果を示す。

肝不全治療薬

肝機能の低下による高アンモニア血症や低アルブミンなどの改善を目的とする。

高アンモニア血症

1. アンモニアの発生源:
食事で摂取したタンパク質が腸内細菌によって分解されると、アンモニアが生成される。

2. 肝臓での解毒作用:
生成されたアンモニアは門脈を通って肝臓に運ばれる。

肝臓は、アンモニアを尿素という無害な物質に代謝し、尿として体外へ排泄する重要な役割を担っている。

肝機能が低下すると、高アンモニア血漿を起こす。

増加した血中のアンモニアは脳に影響を及ぼし肝性脳症を発症する場合がある。

ラクツロースは腸内細菌により分解され酸を生成し酸性度を高める作用をあらわすため、腸内におけるアンモニア産生抑制、吸収を阻害する。(腸内の酸性度が高い(pHが低い)とアンモニアの腸管からの吸収が低下するため)

低アルブミン

アルブミンは、主に肝臓でアミノ酸から合成される血漿タンパク質。アルブミンとは→肝臓で作られる血液中の蛋白質血液中の蛋白質の約60%を占める。

血液の浸透圧(水分を血管内に保つ力)の保持に必要・肝硬変になるとアルブミンが不足し、水分を血管内に保てなくなるため腹水が起こる

また、肝機能が低下すると、アミノ酸の中で分岐鎖アミノ酸(BCAA:バリン、ロイシン、イソロイシンの総称、分岐鎖アミノ酸)が低下する。

BCAAを主成分とする製剤(リーバクト、アミノレバン、へパンED)、グルタミン酸、グルタミン酸アルギニンなどの薬剤が効果を示す。

 

漢方薬

甘草に含まれるグリチルリチン酸が肝保護作用を持つ。

肝硬変の症状を抑制するものが中心。

副腎皮質ステロイド

薬物性肝障害、劇症肝炎、重症アルコール性肝炎で用いる。ウイルス性には用いない。

薬剤

大別して1、インターフェロン製剤、2、抗HCV薬、3、抗B型肝炎ウイルス薬、4、肝機能改善薬、5、肝不全治療薬、6、金属解毒薬に分けられる。

ンターフェロン製剤

インターフェロンアルファ:スミフェロン 注射

インターフェロンベータ:フエロン 注射

ペグインターフェロンアルファ-2a:ベガシス 皮下注

抗C型ウイルス薬(RNAポリメラーゼ阻害)

リバビリン:レベトール  内服薬

抗C型ウイルス薬(配合剤) DAA製剤

レジバスビルアセトン付加物・ソホスブビル配合:ハーボニー 内服

グレカブレビル水和物・ピブレンタスビル配合:マヴィレット 内服

アオホスブビル・ベルバスビル配合:エプクルーサ 内服

抗B型ウイルス薬

ラミブジン:ゼフィックス

エンテカビル水和物:バラクルード、エンテカビル

テノホビルジソプロキシフマル酸塩:テノゼット

テノホビルアラフェナミドフマル酸塩:ベムリティ

肝機能改善薬

グリチルリチン製剤:強力ミノファーゲンシー

タウリン:タウリン

チオブロニン:チオラ

ポリエンホスファチジルコリン:EPL 高脂血症にも用いる

ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミン:リバオール

グルタチオン:タチオン

グリチルリチン製剤:グリチロン

肝臓製剤

肝臓加水分解物:レナルチン

肝臓抽出製剤:アデラビン9号

肝免疫賦活薬

プロパゲルマニウム:セロシオン

肝不全治療薬

L-アルギニンL-グルタミン酸塩水和物:アルギメート

アミノ酸配合:アミノレバン、モリノヘパミン BCAA

分岐鎖アミノ酸製剤:リーバクト BCAA

ラクツロース:モニラック、ラクツロース「コーワ」、ラクツロース、*ラグノスゼリー

ラクチトール水和物:ポルトラック

リファキシミン:リフキシマ

肝中心静脈閉塞薬症治療薬

デフィノブロチドナトリウム:デファイテリオ

金属解毒薬

酢酸亜鉛水和物:ノベルジン 亜鉛薬は食事中の銅吸収阻害をするために、ウィルソン病の銅吸収を妨げる薬