利尿薬
病態
利尿薬の主な適応として、浮腫の低減があげられる。
浮腫の原因
・心不全
心臓の働きが弱ると血管内に余分な水分が溜まる。
その水分が血管の外にしみだしてむくみの原因となる。
・腎疾患
(急性子球体腎炎や、腎不全に起因する循環血液量の増加、ネフローゼ腎不全)
腎臓の働きが低下して余分な水分や塩分を排泄できなくなることにより、心不全と同様に余分な水分が溜まる。
また大量に尿タンパクが出ると血液中のタンパクが減ってしまい、むくみの原因となる。
・肝疾患
肝疾患時にはアルブミン産生量の低下がおこり、血液中の低蛋白血症がおこる。
血管内のアルブミン低下は血液浸透圧の低下を意味し、そのため水分が、体液中へと移行し浮腫がおこる。
以上の原因が考えられないのに、浮腫がおこる突発性の浮腫などがある。
これらの症状を改善する目的で利尿薬が用いられる。
治療薬
利尿薬は薬剤の種類によって作用部位、作用機序が異なるがそのほとんどが腎臓に作用する 。作用部位としては、ヘンレ係蹄上行脚髄質部、遠位尿細管、アルドステロンに作用するものなどが挙げられる。
ループ利尿薬
利尿薬の第一選択薬であり他の薬剤に比べ最も作用が強い。
また、他の薬剤と異なり腎障害罹患時の患者に対しても安全に使用でき、十分な効果を発現する事ができる。
腎血流量、糸球体濾過量に影響を与えない 効果が認められない患者に対してはサイアザイド系との併用が効果的である 。
ヘンレ係蹄上行脚髄質部に作用し効果を発現する。
サイアザイド系利尿薬
遠位尿細管に作用 腎機能が低下している場合には用いない(腎血流作用に影響を与えるため)。
K保持性利尿薬
他の利尿薬の作用によって増加したNa排出に起因する電解質異常(低K症状)を予防する目的で用いることがある。
作用部位は遠位尿細管である 単体ではそれほどの利尿効果は期待できない。
炭酸脱水素抑制薬
近位尿細管において炭酸脱水素酵素を阻害しNa+HCO3-の尿細管再吸収を抑制する。 緑内障にも適用がある。
浸透圧利尿薬
尿細管内の浸透圧を上げることによって再吸収を抑制する。
バソプレッシンV2受容体拮抗薬
抗利尿ホルモンであるバソプレシンに拮抗する。
バソプレシンと拮抗して水の再吸収を抑制する。Naなどの電解質に影響を与えない。
利尿剤の成分名と主な商品名
ループ利尿薬
フロセミド :ラシックス
アゾセミド :ダイアート:浮腫に用いる
トラセミド :ルプラック:浮腫に用いる
サイアザイド系利尿薬
遠位尿細管に作用 腎機能が低下している場合には用いない(腎血流作用に影響を与えるため)。
K保持性利尿薬
カンレノ酸カリウム:ソルダクトン
炭酸脱水素抑制薬
アセタゾラミド :ダイアモックス
浸透圧利尿薬
イソソルビド :イソバイド、メニレット
Dマンニトール:マンニットール マンニットールS
濃グリセリン:グリセオール、グリセレブ
バソプレッシンV2受容体拮抗薬
トルバプタン :サムスカ
トルバプタンリン酸エステルナトリウム:サムタス
他、利尿剤にはMR拮抗薬がある。
スピロノラクトン:アルダクトンA
エプレレノン:セララ
エサキセレノン:ミネプロ