抗寄生虫薬

抗寄生虫薬

病態

現在では時代背景と共に寄生虫に関連する疾患は激減した。

その背景には近代の衛生環境の向上、医療水準の向上がある 。

しかし、昨今の生活様式の変化に伴う海外旅行などの増加や、易感染性宿主の増加によって一度大きく減少していた我が国の感染者が増加したり、以前は存在していなかったはずの寄生虫の増加という現象が起きている。

これらは輸入寄生虫症と呼ばれることもある。

近年の海外渡航者の急激な増加に伴って輸入寄生虫症は増加したが その最たるものはマラリアである。

そういった経緯のもと現在、我が国においてみられる寄生虫感染関連の疾患として挙げられるものは、食品(生鮮魚介類)アニキサス症、広節裂頭条虫症、横川吸虫症、野生動物、ペットを感染源とする多包虫症、イヌ回虫症、イヌ糸状虫症などの幼虫移行症などがあるほか、 生活集団単位内で感染するアメーバ赤痢、水系感染としてのクリプトスポリジウム症、上述した易感染性宿主が感染するトイソプラズマ脳炎などがある。

他、ランブル鞭毛虫症、各種リーシュマニア症 トリパノソーマ症、マンソン及びビルハルツ住血吸虫症、施毛虫症、肝吸虫症、各種糸状虫症などが渡航者によって持ち込まれたと考えられる。

薬物治療

抗寄生虫薬は抗菌薬や抗ウイルス薬と異なる。

作用機序は代謝障害、痙攣、麻痺、生殖器障害である。

まず、第1段階は抗寄生虫薬感染虫体を殺滅し第2段階ではその殺滅された寄生虫等を体外に排出させる事である。

また感染源の特定・消滅を行いその経路を断ち切ることも重要。

しかし抗寄生虫薬の選択にあたっては一定の選択指針が確定されているものから副作用、合併症、薬物が有効に作用しないケースの問題など寄生虫の薬物治療においては未だ確固たるStandaedが設立されていないのが現状である。

抗寄生虫薬はその対象とする部位によって臓器組織・血管内寄生虫症と腸管腔寄生虫症に大きく分けられそれに沿った形での適応上の留意点があり以下の通りである。

各臓器組織や血管内への寄生虫に対応する場合は、薬物として腸管からの吸収率が高い経口薬や、体内循環させる非経口薬を用いるのが望ましい。

それらの薬剤は対象とする寄生虫の代謝機構をブロックするわけであるがその作用は少なからずともヒトの代謝にも影響を及ぼし、主作用である抗寄生虫作用の他、人体への毒性作用を与えてしまう。

そのため、薬物動態、薬理作用時間、最小有効治療濃度を把握しなるべく人体への毒性を与えない治療計画を組むことが必要である。

次に腸管腔寄生虫への薬物治療だが、もちろん腸管内における寄生虫をターゲットとするため 腸管内からの吸収率が低いものが望ましい。

現在では広域駆虫薬が開発されている有鉤条虫に使用する場合虫を破壊した場合、その体内から卵が流出することが懸念されることである

そのためそのケースでは消化管造影剤として使用されるガストログラフィンを用いる事が望ましい。

薬剤の成分名と商品名

抗線虫薬

パモ酸ピランデル:コンバントリン

メペンダゾール:メペンダゾール

クエン酸ジエチルカルバマジン:スパトニン

イベルメクチン:ストロメクトール

抗吸虫薬

プラジカンデル:ビルトリシド

抗条虫薬

アルベンダゾール:エスカゾール

抗マラリア薬

メフロキン塩酸塩:メファキン

アトバコン・プログアニル塩酸塩配合:マラロン


プリマキン塩酸塩:プリマキン「サノフィ」

アルテメテル・ルメファントリン配合:リアメット

抗原虫薬

メトロニダゾール:フラジール、アネメトロ

チニダゾール:チニダゾールF

パロモマイシン硫酸塩:アメパロモ